終局

本文

花畑が燃えている。あのコスモスを植えたのは君。あのすみれを植えたのも君。あのスズランを、あの金木犀を、ここに咲いた、ここに咲く、ここに咲くはずの花を植えたのは君。そしてそれに火をつけたのも君。君は君の心の中の地獄を外に解き放たんことを願い、君が手塩にかけた花畑にガソリンをまいた。

君は炎の中で次は何を植えようかとつい考えて舌打ちをする。君は炎の中にかつて君の花畑を訪れた人を幻視する。君はささやかながらも幸福な日々を送ったのではなかったか。君の地獄が君の花畑を取り返しのつかない形で損なう。その炎の一舐めが花々の上を走ったその時には何もかも手遅れだった。それを見た君の目が見開かれなかったと言えば嘘だ。

もとより君の身体をも焼き尽くすつもりで放った炎。けれどそれが君を焦がすことはない。君の地獄は君の大切なものばかりを焼き払い、君には傷一つつけない。君は君の庭が灰に変わっていくさまをその中心で見続けることになる。君は後悔するか。いや、恨むのだ。恨んで恨んで恨んで憎悪する。君自身を、この世界を。

君は再び火を放つ。

君の地獄が今度こそ君を焼き殺すのを信じて。

あとがき

昨日書いてまずい作品だなあと思ったのだ。もうちょっとどうにかならんかと。しかしここで大傑作が書けるくらいならこうなってはいないわけで。まあこんなものかと諦めている。

悲惨、だろうか。いいえ、決して。本来であれば私はもっと恨まねばならなかっただろう。でも、これだけで済んだ。私は私を憐れまなくて済む。