シリーズ化希望『月下佳人〜箏の調べ〜』

万之葉 文郁『月下佳人〜箏の調べ〜

月夜に奏でられる箏の音の秘密

平安時代のお話です。
時代考証は甘々ですので、雰囲気だけお楽しみ下さい。
史実の人物とは関係ありません。あしからずご了承くださいませ。

文中の和歌は自作です。おかしければ教えてください。どう直せばよいか教えて頂ければ喜びます。

水ぎわ一門プレゼンツ【桃色♡花金ナイトフィーバー】参加作品です。




こんばんは、辰井圭斗です。昨年は『辰井講評窓口2』にご参加くださりありがとうございました。もう7ヶ月以上経ってしまいました。すっかり遅くなってしまい申し訳ありません。こちらに講評を書きます。

ふんわりと平安時代を舞台にして、恋人に去られた箏を弾く女と謎の男が逢瀬を重ねていく話。後の方を読めば読むほど登場人物と物語の輪郭があらわになって味わい深くなっていくのは言ってしまえば何でもないことのようですが、なかなかできることではありません。それだけの深みを引き出せるだけの設計がきちんとされているからだと思います。お見事でした。
4000字台の作品ということで短さに驚いたのですが、読んでみて到底4000字で書ける作品とも思えず、よくよく見てみると一文一文がかなり短いですね。しかし、文章全体がぶつ切りになっているという印象にはならず、なぜこうなっているかを考えてみるに日本語のリズム感覚に優れているのだろうなと感じました。

強いて批評するとするならば、「時代考証は甘々ですので、雰囲気だけお楽しみ下さい」と書いてあるところ恐縮なのですが、最初から”見え過ぎ”だと思います。恐らく百も承知で書いていらっしゃるとは思いますが、平安時代において「見う(あう)」とはほとんど性行為に近い意味を持ちます。それなりに身分のある女性は男性の目を避けるものですし、お互いの姿はなかなか見えるものではありません。
しかし、本作では最初から由景が「目元の涼しい優男」であることまで見えてしまっています。由景の方がそれだけ見えるのですから、女の方ばかり見えないということもないでしょう。
なにも私はここで単に時代考証をつついて鬼の首を取ってみせたいのではないのです。申し上げたいのは、折角箏を出して”見えない恋”を描写できる環境が整っているのに書かないのは勿体ないということです。時代考証に忠実に「最初は相手の姿は見えないものだ」という縛りがあれば、女の感情を示す道具としての箏ももっと活きますし、”見える”状態になった時、関係の進展をよりドラマチックに見せることができます。最初由景の外見描写をできないというデメリットはありますが、由景がキャラとして生きてくるのは後半なのだから取っておけばよいのです。

長々と申し上げましたが、とはいえ「雰囲気だけお楽しみ下さい」と書いてあった雰囲気はとてもよく、幻想的な平安時代を感じさせるものでした。由景シリーズが読みたいなと思わされるほどに由景が魅力的で、最初女の話であった物語が由景の話に推移するのが自然で心地よく感嘆しました。素敵な小説でした。読ませてくださりありがとうございました。




【作者様からの返信】

お忙しいところ、読んで講評頂きありがとうございます。

すごく褒めて頂けて嬉しいです。
初めて平安時代のお話を書いたのですが、雰囲気を感じて頂けてよかったです。
仰られるように、平安時代、月夜と言っても顔がはっきりとは見えないですし、貴族が早々にお互いに顔を見せ合うことはないでしょうが、このお話、出されたお題を見て一週間で書くと言う企画のものでして、展開を早めたところがあります。
五感を刺激するように心掛けたつもりですが、視覚をあえて遮断する。そういう描写も確かにまた面白いものが書けそうです。
字数が少ないのもその企画の関係ですが、スマホで書いているので余計にそうなるのかもしれません。それが不自然に思われなくてほっとしました。

平安時代は好きでも引き出しが少ないので今のところ続編は書けませんが、勉強してまたチャレンジしてみたいなとは思います。

こうやって講評を書いて頂ける機会はそうないので勉強になりました。
本当にありがとうございました。

万之葉 文郁『月下佳人〜箏の調べ〜