静かな怪物『2020夏・異常繁殖外来植物駆除大作戦』

武州人也『2020夏・異常繁殖外来植物駆除大作戦

異常繁殖したツル植物が全てを覆い尽くす!

2020年夏、多摩川の河川敷を占領した緑の怪物。それに対して人類はあらゆる手段を用いて戦いを挑む。しかし、抑え込みに失敗した人類はとうとう、最後の手段に出た。




こんばんは、辰井です。今日は自主企画「辰井講評窓口3」にご参加くださりありがとうございます。なんだか疲れていて、はがちさんの小説を読みたい気分だったので読みに参りました。

ディザスター的に異常繁茂するツル性植物アレチウリをあの手この手を使って駆除しようとする話。「えっ! アレチウリ、スーパーグリホサートに負けるの⁉ ここは地球がアレチウリに覆われて真緑になるのがはがちさんじゃないの⁉」とびっくりして終わったのですが、それはさておき。
難しいものを書かれるなと思いながら拝読しました。いかんせん相手が植物なので、戦いが静かになりがちです。これがサメなら、人間側のアクションに対して何らかの反応をしてくれるんですけど、アレチウリは燃えたり枯れたりするだけで奇声も上げてくれないですし。映画『ツイスター』は竜巻を相手にした映画で、竜巻相手にはドラマが起きないから脚本の難易度が高いねなんて言われますが、それで言うとアレチウリの方がよっぽど難しいです。竜巻みたいに動きまくって画面映えしてくれませんので。

じゃあ人間側を動かすかという発想になるのですが、この小説の場合カメラ位置がかなり高いところにある(”神の視点”にかなり近い)ので、途中楽しい植物駆除薀蓄を文章上無理なく語れる一方で、慌てふためく人間個々までは接近しにくくなっています。モンスター、或いはディザスターものとしては淡白になってしまいがちな視点の設定かなと思いました。全体的に淡白な中差し込まれる、「嘘だろ……」とか「自衛隊に協力を要請する」とか「スーパーグリホサートの使用を許可する」というある意味お約束なセリフの感触がとても好きではあるのですが。
結局モンスター・ディザスターもののどこが好きかというところで好みが分かれたのかもしれません。私はモンスター・ディザスターの一方で翻弄される人間のドラマが好きだったりするので、私が本作を書くならば、植物駆除に詳しい市役所職員に蘊蓄を語らせながら、彼の3人称1視点で書いてしまうかなと思いました。
あと、好みとしてはアレチウリにもっと大暴れしてもらいたかったです。寝ている間に人間巻き込んじゃうとか。作品としてよくまとまっている一方で、しかしこういう作品でまとまるということは正義なのか? と考えてしまうのです。歪なバランスでも突き抜けた作品が好きではあります。

好みの話を長々としてしまってすみません。相変わらず楽しく、そもそもの地力の強さを感じながら拝読しました。疲れてたのに元気になっているから不思議です。読ませてくださりありがとうございました。




【作者様からの返信】

ありがとうございます。丁寧な講評感謝致します。
>あと、好みとしてはアレチウリにもっと大暴れしてもらいたかったです。寝ている間に人間巻き込んじゃうとか。
実在の植物ということで心のどこかにブレーキがかかってましたね…よくよく考えるとサメ映画のホホジロザメなんかは現実離れしてることがよくあるのでもっとはっちゃけてもよかったかも知れませんね。

武州人也『2020夏・異常繁殖外来植物駆除大作戦