詩で語られるその時代の新たな神話『空』

@Pz5『

空はどこまでも蒼い。

病床に臥せり、窓に遮られた空に憧れる少年と、空を飛び、その事に恐怖を覚え始めた少年の、互いを「彼」と呼び、互いに名も知らない二人は、手紙のやり取りを重ねることで関係を育んでく。しかし、病の少年を外から守り、世話をする「母」は、「あの子」が死と飛行機械の少年によって自分の手から離れることを恐れ、忌避していた。そこへ、嵐が訪れる……




こんにちは、辰井圭斗です。先日は「辰井講評窓口3」にご参加くださりありがとうございました。こちらに講評を書きます。

空と「彼」と「彼」そして「母」の話。すごい、のですが、これはちょっと私では読み手として力及ばずかもしれないなと思いながら拝読しました。とにかく、読みながら思ったことを書こうと思います。
近世或いは近代の西洋を思わせるような世界観で、神話を織り交ぜながら語られる詩のかたちをした小説。それを書ききっているという時点で感嘆してしまいます。世界観と二人の「彼」、そして「母」の情念が余すところなく書かれています。しばしば文中で用いられる反復が、語り手のエモーションを否が応でも伝えていて、表現の効果と文体の美しさの一致が見事でした。

形式の美しさが非常に重要な作品で、安易にストーリー解釈をすると作品を矮小化しかねないとは思うのですが、ストーリーもよかったです。「母」の正体までは読み込めませんでしたが、神話的、人類学的というか人類の古いかたちまで遡る要素を感じさせる「母」のもとから離れ、「彼」とともに空に飛び立ち、互いの名前を明かす。このストーリーライン自体かなり神話的です。この作品は、比較的新しめの世界観の中、古い古い物語の形態を含みこみながら詩のかたちをした小説にしてしまうというものすごいことをしていて、よくぞここまでと思いました。読めてる自信は全くありませんが。

大変なものを読ませていただきました。読ませてくださりありがとうございました。

@Pz5『