誇りとバディ『怪鴉紳士インバネス・レイヴン』

狐『怪鴉紳士インバネス・レイヴン

鴉を狩るは、異形の鴉人。

性癖:スチームパンク
性癖:人間と人外の境界にいる存在
性癖:価値観の衝突
性癖:相棒との共同作業

第二回性癖小説選手権参加作品です




こんにちは、辰井です。先日は自主企画「辰井講評窓口3」にご参加くださりありがとうございました。遅くなってしまい申し訳ありません。こちらに講評を書きます。

貧困と鴉がはびこるロンドンで、生きるために誇りを捨てそうになった荷馬車の御者が鴉頭の用心棒と組む話。素敵なところが色々とある短編でした。主人公が新たな相棒と組むことによって、誇りを取り戻していくという主人公側のプロットもいいですし、手の届かない星を「憎たらしい」と言いつつ焦がれているようにも見える用心棒の造形もいいです。誇りを重んじる彼にとって、星とはどういう存在かということを考えるとグッとくるものがあります。

全体のレベルが高いだけに惜しいなと思う点がいくつかあります。
まず、これはかなり感覚的な話になってしまうのですが、硬い言い回しをしていることが時代感を感じさせ雰囲気づくりをしている一方で、所々文章のバランスが崩れているように感じました。例えば、”毎日平穏無事に仕事を終えられているのは、僥倖なのだ”など、そこに僥倖という熟語を持って来るとこの1文の流れが狂います。同じ音数でもここは熟語にはしないなと思いました。すみません、すごく感覚的で。ともあれ、文章のリズムやバランスが狂うと一気に凄みが無くなるので、雰囲気作りよりはそっちを優先させた方がいい気がします。
この作品で敵となる鴉のリアリティラインがよく分からなかったのも惜しかったです。つまり、この作品の鴉《クロウ》は私たちの日常にいるあのカラスでいいのか、それとももっとフィクショナルな存在なのか特に最初の方はよく分かりませんでした。鴉頭の用心棒がいる時点で察するべきなのかもしれませんが。最初の方は鴉について”説明”がされていますが、鴉の所業の部分を”説明”ではなく”描写”で書いた方がよいのではないかなと思いました。後の方に出てくる”看板を薙ぎ倒し、街灯を折らんとする”などの描写はパワーがあるので。

とはいえ、ここで書いたようなことは、全体に水準が高いので却って見えやすかったようなところで、バディものの「誇り」の物語は胸アツな要素が一杯でした。読ませてくださりありがとうございました。




【作者様からの返信】

辰井さん講評ありがとうございます!
文章のリズムと描写について、参考になる意見をありがとうございます……!!

狐『怪鴉紳士インバネス・レイヴン