イノセントな百合『CAGE OF InnOCENCE』

宵待なつこ『CAGE OF InnOCENCE

世界に二人だけの、密やかな毒薬《あい》



こんばんは、辰井圭斗です。昨年は「辰井講評窓口3」にご参加くださりありがとうございました。講評が大変遅くなってしまい申し訳ありません。こちらに講評を書きます。

イノセントな箱庭の中で互いに想いを懸けあう2人の少女の話。タグに耽美と書かれていますが、清潔感のある耽美で、それが単にシチュエーションだけでなく文章全体で作りこまれているのが見事でした。

ただ、優性遺伝子、劣性遺伝子という言葉は気にかかりました。もちろん“新たな発見”とは書いてありますが、どうしても優性遺伝、劣性遺伝を想起はします。ご存知の通り優性遺伝と劣性遺伝の優性と劣性は顕性か潜性かという意味で優劣ではないのですが、近年名称の変更がされたように、誤解を招きかねないセンシティブな名称でした。無論、私が書いたようなことは宵待さんもご承知の上で書かれているとは思います。ただ、そうしたご承知の認識がどこまで一般に通じるだろうかとも思うのです。あまりこういうことを言う側には回りたくないのですが、嫌な誤解を生まないでしょうか。同性愛の話についても、作中で劣性遺伝子を持たない者が同姓を好きになることはあってはならないことだと言われます。それが物語の悲劇的結末につながる誤った考えだということは、宵待さんは分かった上で書かれているとは思います。しかし、今もなおLGBTQの人々が「優劣」を示唆するような言論にさらされている中、この描写は危うくないか考えてしまいます。気にしすぎでしょうか。そんな気もします。ただ、私が申し上げたいのは、この作品をこのままのかたちで娯楽として誰もが読めるほどの強度を、残念ながらこの世界はまだ持っていないのではないですか、ということなのです。

ですが、力のある作家さんであることはよく分かりました。読ませて下さりありがとうございました。




【作者様からの返信】

ありがとうございます。

おっしゃるとおり、性格の遺伝に優劣はないということを踏まえた上で、雰囲気重視の作品に仕上げたのですが、実はこの作品は十年くらい前に書いたものなのです。
その当時はここまでLGBTに対して言及されることもなく、特に問題もないと思っていたのですが、言われてみれば確かにセンシティブな表現だったのかもしれません。

ありがとうございました(^-^)


宵待なつこ『CAGE OF InnOCENCE