情景も匂いも感情も全てを感じる『僕とばーちゃんと、時々彼女の島 ~僕の穏やかな島暮らしが終末を迎えるまで~』

 武石雄由『僕とばーちゃんと、時々彼女の島 ~僕の穏やかな島暮らしが終末を迎えるまで~』 

 その夏は、僕とばーちゃんと彼女で共に過ごす、最後の夏だった
 ※昨今のコロナ禍を思わせる描写があります。不謹慎、不快と思われる可能性がございますのでご注意ください。

 僕はばーちゃんとふたり、この島に暮らしている。
 生まれてからこの方、一度も外に出たことはない。
 そんな僕が知るヒトはばーちゃんと、
 本土から船で毎週のようにやって来る年上の少女アカリだけ。

 このままずっと三人で続くと思っていた穏やかな暮らしは、
 一人の漂流者を発見したことから崩れ去っていく。

 ばーちゃんのかつての部下だった彼は、世界中を震え上がらせたという感染症に冒されていた——

 ※この作品は「小説家になろう」「ノベルアップ+」「NOVEL DAYS」と重複投稿になります。

 




 こう、本当にすごい所はなかなか言葉にしづらいなと思います。まず最初の島が遠ざかっていくところで心を奪われました。「ああ、これは最後まで読むしかない物語だ」と。海と風の匂いがするんです。僕、上手い作家って文章から匂いがすると思っていて、武石さんは本当に上手いなあと思いました。それ以降もそう。情景と匂いと感情の全てを感じます。ありきたりな言い方ですが、それって「そこにいる」ということですよね。

 もちろん言葉にしやすい所もあります。とてもよくできたSFですから。途中から書き方に違和感を感じるんですが、それがどういうことか第8話で分かる、その時のゾクゾク感は忘れられません。この話、ちょっとした設定・描写にも理由があります。

 そしてアカリのあれのまさしく「あっ」という感じ。その後ああなりますけど、でも一面としてはあれきりなんですよね。それで済ませてしまうのかと思いました。でもそれが……ということですから(ネタバレを恐れて何も言えん)。僕はあれで素晴らしいと思います。

 あとは、毎回引きがすごいんですよね。引きを作るのに必ずしも事件やアクションを起こす必要は無いんだなということを改めて勉強できました。

 ……いいところとか、面白さとか伝わった? 読んでね。

 武石雄由『僕とばーちゃんと、時々彼女の島 ~僕の穏やかな島暮らしが終末を迎えるまで~』